曲がり道の物語。
まっすぐ進めない日がある。
遠回りして、自分を責めて、泣いてしまう日もある。
でも、そんな道にも、見えない優しさが咲いているのかもしれません。
この物語は、まっすぐな白い鳥と、曲がり道ばかり歩いてきた少女の、
癒しと寄り添いの物語です。
読んでくれるあなたの歩いてきた道が、
どうかそっとあたたかく包まれますに。
― 曲がり道の物語のはじまり
昔々、風がよく吹く小さな村に、
高く広い空をまっすぐ飛ぶのが得意な、
一羽の白い鳥が住んでいました。
鳥は空が大好きでした。
風の流れに逆らってでも、いつも正面をまっすぐ飛んでいました。
どんなに嵐が来ても、迷わずにまっすぐ進む鳥は、
村の人たちからも「強くて立派な鳥」と呼ばれていました。
でも、鳥はときどき思っていたのです。
「どうしてみんな、空を飛ばないんだろう?
まっすぐ進めば、きっとどこへだって行けるのに。」
― 森の奥で出会った少女
ある日、鳥は風に流されて、
ふだんは飛ばない森の奥へと迷い込みました。
そこで見つけたのは、
古い小道の端で立ち止まっている、一人の少女。
少女は何度も立ち止まり、
ときに引き返し、ときに立ち尽くし、
同じところをぐるぐると歩いているようでした。
上から見ていた鳥は降りてきて、
少女にたずねました。
「どうしてそんなところで迷っているの?
空を見て、まっすぐ進めばいいのに。」
少女は、顔を上げて微笑みながら、
少しだけ涙を浮かべてこう言いました。
― まっすぐが、選べなかっただけ
「私はね……
たくさん曲がり道を歩いてきたの。
こわかったの。
まっすぐ進むのが、まぶしくて、まっすぐじゃない自分が恥ずかしくて。
だから、いつも遠回りばかりしてきた。
立ち止まっては、自分を責めて、
後ろを振り返っては、また傷ついて……。
でもね、それでも、ここまで来たの。」
鳥は黙って、少女の目を見つめました。
その目は、遠回りしてきたとは思えないほど澄んでいて、
傷ついてきたぶんだけ、やわらかく、そしてまっすぐでした。
― 肩に止まった、小さな羽
その日から、鳥は空を飛ぶことをやめました。
少女の肩にそっと止まり、
彼女が一歩歩くたびに、こうささやきました。
「大丈夫。いま歩いているこの道も、ちゃんと前に進んでる。」
少女は驚きました。
道がまっすぐじゃなくても、
歩くことを誰かが認めてくれることが、こんなにも温かいなんて。
それから少女は、前よりもゆっくり、
でも確かな足取りで、曲がり道を進むようになりました。
ときにはまた立ち止まる日もあったけれど、
もう自分を責めることはありませんでした。
― 曲がり道でしか出会えない優しさ
少女と鳥が進んだ道には、
小さな花が咲いていました。
寄り道をしなければ気づけなかった香り、
立ち止まらなければ見えなかった空の色。
まっすぐな道では通りすぎてしまうような、
そんな優しさやあたたかさが、そこには広がっていました。
少女は、自分の歩いてきたすべての曲がり道に、
少しずつ、すべてが無駄な道ではなかったとそう感じられるようになってきました。
そして気づいたのです。
まっすぐじゃなかったけれど、たしかに自分だけの道だった――そう思えた瞬間でした。
― この「曲がり道の物語」が届けたいこと
この物語の鳥は、あなたにとっての「声」かもしれません。
少女は、今のあなた自身かもしれません。
まっすぐに進めないときがあってもいい。
立ち止まっても、泣いても、遠回りしても、
そのすべてが、ちゃんとあなたの「今」に繋がっている。
あなたが歩いているこの道は、
世界に一つだけの、かけがえのない曲がり道の物語です。
いつかその道の先で、
まだ知らないやさしさと出会えますように。
そして、歩いてきた道すべてが、
自分なりに歩んでいければ大丈夫だと、自分にそっと言えるように。
過去や今がどんなに苦しかったり、寂しかったとしても、
この物語が、その日までの道しるべになりますように。
そして、あなたが歩いてきたすべての日々を、
やさしく抱きしめられる明日が、いつか静かに訪れますように。
コメント